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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1228号 判決 1950年12月19日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人古田孝同長尾練一両名弁護人松本重夫の上告趣意第一点について。

被告人等の本件行為については恐喝罪を以て処断すべきであるとの所論は、被告人等の不利益に帰する主張であるから上告の理由として許されないばかりでなく、原判決は被告人等に財物を領得する意思のあった事実を認定していないのであるから原判示事実を恐喝罪と認めないで刑法二二三条一項前段の強要罪に当るものとして同条を適用したことはもとより正当である。その他の所論は結局原審の事実誤認を主張するに帰するので上告適法の事由ではないから採用することができない。

同第二点について。

所論小池滋郎に対する司法警察官の聴取書が証拠能力を有することは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一九日大法廷判決、昭和二三(れ)第八三三号同二四年五月一八日大法廷判決)の趣旨に徴して明かであって、所論を検討しても前記判例を変更すべき必要を認めない。それゆえ、前記聴取書を証拠に採用した原審の処置を違法とする論旨は理由がない。

被告人古田孝弁護人松本重夫の上告趣意第三点について。

所論は、原審に審理不尽の違法があるというのであるが、結局原審が適法にした証拠調の限度の決定を非難するに外ならないのであるから理由がない。

被告人長尾練一弁護人窪谷朝之同長友安夫の上告趣意第一点及び第二点について。

論旨第一点は原審に重大な事実の誤認あることを疑うに足りる顕著な事由があるといい、論旨第二点は、原審の刑の量定は甚だしく不当であると思料すべき顕著な事由があるというのであるが、このような主張はいずれも日本国憲法施行の日以後上告の理由として許されないのであるから採用することができない。

よって、本件上告はいずれも理由がないので、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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